相続税・贈与税

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孫に生前贈与する為には?おススメの方法・注意点について紹介する!

相続税の節税対策の1つとして行う方も多い生前贈与。もし孫に生前贈与を行いたい場合は、どのような方法をとるのが良いのでしょうか。本記事では、孫に生前贈与するメリットや非課税で生前贈与できるケース、注意点など、孫への生前贈与に関して役立つ情報をご紹介します。孫への生前贈与について疑問や悩みを持っている方はぜひ参考にしてみてください。

孫に生前贈与する為には?おススメの方法・注意点について紹介する!

孫に生前贈与するメリット

孫に生前贈与する最も大きなメリットは、祖父母の財産が孫に相続されるまでの過程で、発生する相続税を減らせることです。被相続人が亡くなった場合、その財産は配偶者や子どもなどに相続されます。そして子どもが亡くなった後、その財産は孫に相続されます。このような過程を経ると、相続税は子どもが相続したとき、そして孫が相続したときの計2回発生します。相続税の税率は10~55%と小さくありません。何度も相続税が発生すれば、元々の財産が孫に渡るまでの間に、受け取れる金額がかなり減ってしまうことになります。しかし、生前贈与によって、1世代飛ばして財産贈与をすることにより、相続税の課税を1回分回避できるのです。

また、3年以内贈与財産の加算の対象外となることもメリットと言えるでしょう。3年以内贈与財産の加算とは、被相続人が亡くなった日から遡り、3年前までの間に行われた生前贈与は相続とみなし、相続税の課税対象にするというものです。ただし、この贈与財産の加算の適用対象は、法律上の相続人のみです。つまり、孫は相続人に当てはまらないため、被相続人が亡くなる3年前までの間の生前贈与でも、加算対象にはなりません。

孫への生前贈与が非課税になる場合

財産を贈与した場合、通常は贈与税が発生します。しかし、孫への生前贈与において贈与税が非課税になるケースもあります。どのようなケースで非課税になるのか解説します。

学費として生前贈与する

孫の学費を目的とした生前贈与は、1500万円まで非課税で一括贈与することができます。ただし、非課税の取り扱いを受けるにはいくつかの条件もあります。1つは贈与を受ける側の人間が教育資金口座を金融機関に作ることです。そして口座開設をしたことを税務署にする必要があります。もう1つは受け取った財産はこの口座の中で管理し、使用した場合は領収書を金融機関に渡すことです。これらの条件を守れば、学費として受け取った生前贈与には贈与税は課税されません。

なお、3年以内に贈与者が亡くなった場合の相続への加算適用となるか否かは、受贈者の状況によります。贈与者が亡くなった時点で、受贈者が23歳未満、かつ学校等に在学もしくは教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けている場合は、相続の対象となりません。30歳までに使いきれなかった分に関しては贈与税の課税対象となるので注意が必要です。なお、1,500万円の限度額で非課税となるのは、直接学校に支払われるような教育資金のみです。塾の月謝や留学費用など、学校以外に支払われるお金の贈与は500万円までが非課税です。贈与されたお金の用途や支払先によって非課税となる金額が異なるので注意しましょう。

年間110万円以内で生前贈与する

1人の受贈者につき1年間で受けた贈与の合計が110万円以内であれば贈与税はかかりません。贈与税の基礎控除額が110万円であるためで、このことを「暦年贈与」と言います。なお、年間の贈与額の合計が110万円を超過すれば、超過分が課税対象となるので注意が必要です。暦年贈与の範囲内で贈与を行えば、孫に非課税で生前贈与を行うことが可能です。ただし、毎年110万円以内の一定の金額を贈与していると、定期贈与とみなされる可能性があります。

定期贈与の場合は、毎年の贈与額が110万円以下であっても、相続額の合計に相続税が課税されます。これは、贈与を始めた時点で、既に総額110万円を超える金額での贈与が行われると取り決めがあったものと判断されるためです。生前贈与を行う場合には、定期贈与でないことを明確にするため、毎年贈与するたびに契約書を締結した方が良いでしょう。

住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を活用する

現金ではなく、不動産を贈与するケースもあるでしょう。孫に土地、住宅などを贈与した場合、要件を満たしていれば、一定の金額までは住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を活用することができます。一定の要件は複数あります。まずは孫が20歳以上であること。次に、贈与を受ける年の孫の合計所得金額が2000万円以下であることです。贈与した翌年の3月15日までにその住宅に居住すること、または居住が見込まれることなどもあります。この制度自体が、受贈者自身の住宅用の家屋取得に対するものであるからです。そのほか、贈与の時点で受贈者が日本国内に住所を持っていること、平成21~26年の間にこの制度の適用を受けたことがないことなどもあります。例外が存在する要件もあるので、贈与を行う前に特例に当てはまるのか全ての要件をしっかり確認しておきましょう。

なお、非課税となる不動産の限度額は、贈与を行った年や住宅の種類によって異なります。おおまかには、2015~2021年までの贈与で、省エネ等住宅の場合は800~1,500万円、それ以外の住宅は300~1,000万円が限度額です。ただし、2019~2021年に消費税率10%で贈与を受けた場合は、省エネ等住宅が1,200~3,000万円、それ以外の住宅が700~2,500万円の限度額になります。

結婚・子育ての資金として生前贈与する

孫に結婚・子育ての資金として生前贈与する場合、1000万円までは非課税対象となります。その中でも結婚資金の非課税限度額は300万円なので注意が必要です。結婚資金には、挙式費用や結婚に伴う引越し費用などが挙げられます。子育て資金には、妊娠・出産にかかる費用、不妊治療代、産後ケアの費用、育児にかかる費用、子どもの医療費、幼稚園・保育園代、ベビーシッター代などが当てはまります。この制度は制度の対象となる資金使途が細かく定められているので留意しておきましょう。例えば結婚資金であればブライダルエステや新婚旅行の費用は非課税の対象外です。また、子育てのためでも、家具の購入など直接育児に関連しないものは対象外になります。子育て目的の場合は基本的に、子どもが小学校入学までが対象です。

なお、贈与を受ける前年の受贈者の所得が1,000万円を超える場合は、この制度を利用することはできません。制度の適用を受けるためには、結婚・子育て資金口座を金融機関に作り、税務署に申告する必要があります。かつ、資金を使用した際はその都度費用の領収書を金融機関に提出しなければなりません。制度の利用中に受贈者が亡くなった場合は金融機関への届出が必要です。また、口座に資金が残っている場合は、残額が相続税の対象となります。

孫への生前贈与する際の注意点

孫に生前贈与をする場合、意識しておきたいポイントがあります。ここでは、孫への生前贈与における注意点について具体的に解説します。

定期贈与をしないようにする

非課税に関する項目でも触れましたが、毎年110万円以下の暦年贈与を行う場合は、定期贈与とみなされないようにする必要があります。税務署から定期贈与だとみなされると、年110万円の控除に関わらず、毎年贈与を受けた金額の合計に贈与税が課税されます。定期贈与とみなされないためには、毎年贈与するたびに契約書を結んでおくと良いでしょう。これは、各年の契約のもとに贈与があったことを証明するものであり、一括で贈与の取り決めがされていたものではないという意味にもなります。贈与があった年の契約書がないと、暦年贈与の証明が難しくなり、結果一括で課税対象にされてしまう可能性もあるので注意が必要です。

また、毎年同じような時期に贈与を行うと、定期贈与とみなされる可能性が高くなるので、年によって贈与の時期を変えるのも良いでしょう。毎年の贈与額が全く同じであっても定期贈与と判断されやすいため、金額を年によって変えるのも1つの方法です。そのほか、贈与のない年を設けて、毎年連続した贈与にしないという方法もあります。

孫が管理する

根本として、孫への生前贈与には双方の了承が必要です。祖父母が孫に財産を贈与しようという意志だけでなく、孫にそれを受けとる意志がなければ生前贈与は成立しません。例えば孫に生前贈与を受ける意思がないのに、親が孫への生前贈与として受け取った場合、孫への生前贈与とはみなされないということです。また、孫に生前贈与を受ける意志があったとしても、孫が贈与した財産を使えない場合、贈与は成り立ちません。つまり、孫への生前贈与が成立するためには、孫が贈与を了承し、かつ自分で贈与された財産を管理できるという事実が必要だということです。

ただし、孫が幼児などまだ幼く、本人に贈与に関する判断や管理が困難な場合は、親権者である親が財産を管理します。その場合も、財産の管理を任されているからといって、親が私的な理由でこの財産を使用することはできません。あくまで親は管理をしているだけであり、孫への生前贈与は孫に対する用途のみが認められると理解しましょう。また、孫が財産の管理可能な年齢になり、親から孫へ管理を引き継ぐ場合も、本来の用途意外に資金を使用しないよう親が孫に十分説明することが大切です。生前贈与の非課税対象に関する知識が不十分なまま財産を管理すると、非課税の対象外となる資金の使い方をし、追徴課税を受けるなどのリスクがあります。

遺留分を侵害しないようにする

遺留分とは法定相続人が、相続を受けることを法律上で保証することです。法定相続人は、法律で相続を受けられることが決まっている人のことを言います。例えば、亡くなった人の配偶者や子どもは法定相続人として、相続を受ける権利が法律により保証されています。もし亡くなった人が遺言を残していなかったり、あるいは法定相続人以外の人に相続させる旨の遺言を残していたりといった場合でも、法定相続人は遺留分として、法律で取り決められた割合の財産を相続することができるのです。祖父母が財産のほとんどを孫に生前贈与した場合、法定相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。

例として、祖父母に子どもが複数人いるとしましょう。その子どもたちには遺留分が認められますが、財産の大半を孫に生前贈与する場合、その贈与する財産の中に遺留分も含まれていると考えられます。そのため、贈与を行った人が亡くなった後、法定相続人である祖父母の子どもなどから、遺留分減殺請求をされる可能性が高くなります。これは、法定相続人の遺留分を取り戻す請求です。この請求が行われれば、贈与された財産から遺留分を法定相続人に戻さなければなりません。しかし、遺留分の財産まで既に使用した状態だと、遺留分を侵害したとして遺留分侵害請求に発展する恐れがあります。このような相続のトラブルを発生させないため、生前贈与を受けた財産の使用は、遺留分を侵害しない程度に留めておきましょう。

亡くなる3年前の贈与によう生前贈与加算

これも先に触れましたが、生前贈与加算についてもしっかり理解しておく必要があります。生前贈与加算とは、相続開始から遡って3年前から、相続開始までの間に行われた贈与は、相続税が課せられるという制度です。つまり、生前贈与を受けてから3年以内に贈与を行った人が亡くなった場合、生前贈与加算の対象となる可能性があるということです。生前贈与加算の対象は法定相続人のみです。孫は法定相続人ではないため、生前贈与加算の対象外となります。しかし孫が代襲相続人である・孫に遺贈が行われる・祖父母と孫が養子縁組をしている・孫を生命保険の受取人にしているなどの場合は、相続税の課税対象です。

また、代襲相続人や養子縁組以外のケースは、相続税額の2割加算の対象にもなります。これは、被相続人の一親等の血族(父母や子ども)と配偶者以外が財産を相続する場合、相続税額が2割増しになるというものです(代襲相続人や養子は一親等の血族とみなされるため、加算の対象になりません)。なお、もし贈与税を既に納付している状態で、後に相続税が発生した場合、相続税額から納付済みの贈与税額を差し引くことで、税金の二重払いを防ぐことができます。ただし、既に発生している贈与税額より相続税額が少なかったとしても、贈与税の還付は発生しないので注意しましょう。

しっかりと生前贈与について理解しよう

生前贈与は相続税を節税するため非常に有効な方法です。しかし、生前贈与の内容や注意点などを十分理解できていないと、非課税制度の対象外になったり、相続トラブルが発生したり、うまくいかない可能性もあります。スムーズにお得に財産の受け渡しを行うため、しっかり理解を深めた上で生前贈与を行いましょう。よくわからないことがある場合は、専門家に相談するのもおすすめです。

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