生前相続放棄は不可能?その理由から生前にできる代わりの策を紹介!

誰にとっても遺産相続にまつわるいざこざは避けたいものです。中には、できれば早いうちに相続権を放棄して将来起こりうる相続問題から手を引きたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし残念ながら、被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。その理由はなにか、そして代替策としてできることについて、本記事でご紹介します。

相続放棄とは?

人が亡くなると、その人の残した財産(遺産)は法律や遺言書などに基づいてしかるべき人に分配されます。これを「遺産相続」といいます。法律では財産を残して亡くなった人を「被相続人」、遺産を受け取る相続権を持つ人のことを「相続人」といいますが、実は相続人は必ずしも遺産を相続しなくてはならないということはなく、家庭裁判所に申述して受理されれば相続権を放棄すること、すなわち「相続放棄」が可能になります。

 「相続を放棄したい」とはどういうことなのか、不思議に思われる方もいるかもしれません。金品や不動産などの財産が貰えるのであれば欲しいと考える人のほうが多いでしょう。ところが、遺産というのはこうしたプラスの財産ばかりとは限りません。借金というマイナスの財産が残っている場合もあり得るのです。相続人がマイナスの遺産を相続するということは、借金の返済を故人に変わって引き継ぐという意味になります。それでも現金などのプラスの遺産もあってそれを返済に充てられるならまだ良いのですが、借金しか残っていないとなると目も当てられません。こうした場合の救済制度となるのが相続放棄です。相続放棄を行うことで相続人は被相続人が残した借金の返済から逃れることができます。

また、家族の仲が悪く相続の際に関わりを避けたい、相続問題に巻き込まれたくない、といった理由から相続放棄が検討されるケースもあります。仲の悪い家族間で相続時にトラブルが発生する可能性は、当然仲の良い家族よりも高くなりますし、親子間または兄弟間で絶縁状態になっており顔を合わせるのも嫌だという理由で相続権を放棄する場合もあります。

生前の相続放棄はできない!

被相続人が生きているうちに相続放棄はできるでしょうか? 

答えは「できません」。民法では、相続放棄の手続きは「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行うこと」と定められています。つまり、相続というのは被相続人の死亡によって開始されるものであり、開始されていないものを放棄するということはできません。したがって法律上、生前の相続放棄は認められておらず、家庭裁判所でも生前の相続放棄の申述は受理していません。実際の裁判でも生前に行われた相続放棄は無効との判決が出ています。

生前の相続放棄を認めてしまうと、相続人が被相続人や他の相続人から自分の意思に反して相続放棄を強要される、といったリスクも生じます。相続人の平等性を担保するためには、相続が発生してから相続人本人の意思で家庭裁判所に申述することが重要であると考えられています。

生前の相続放棄が不可能である以上、相続対策を行うのであれば他の方法を考えるしかありません。

念書や誓約書を書いても無効!

念書や誓約書がある場合の相続放棄はどうなるでしょうか。念書や誓約書とは、相続人が「自分は相続を放棄します」という旨の書面をしたためたものです。

被相続人の生前に作成された念書・誓約書は、当然無効となります。先にも説明したとおり、生前の相続放棄は法律上認められていないためです。

では、相続開始後に作成された念書・誓約書についてはどうかというと、これも法的な効力はありません。相続放棄とは、家庭裁判所で申述し受理されてはじめて成立する制度であるため、当人間の取り決めの中で作成された書面だけでは法的に有効な書面とはいえないのです。

ただ、法的な効力はなくとも、こうした書面を被相続人の生前に用意しておくことで他の相続人に対し心の準備をする時間や、逆に心理的プレッシャーを与える効果は期待できるかもしれません。あらかじめ相続を放棄したいと意思を示すことになるので、実際に相続が開始されたときに他の相続人の理解も得られやすく相続放棄の手続きがスムーズにできる場合もあるでしょう。

相続放棄の正式な手続きは、家庭裁判所で行う必要があります。自分が他の相続人に強要され不当な相続放棄をさせられないためにも覚えておきましょう。

ちなみに、遺産分割協議の中で念書を作成した場合、相続放棄ではなく「相続分の遺産放棄(または譲渡)」として取り扱われる可能性がありますので、こちらも注意が必要です。

相続放棄が出来る期間とは

先にも少し触れましたが、相続放棄が出来る期間については、民法第915条「相続の承認又は放棄をすべき期間」に「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」との記述があります。もし相続放棄をするのであれば、相続の開始から3ヶ月以内に手続きを取らなくてはなりません。この3ヶ月は熟慮期間と呼ばれ、これを過ぎてしまうと相続放棄はできなくなります。

ここで注目すべきは、相続の開始があったことを「知った時」という部分です。一緒に暮らしている家族やすぐに連絡のつく親族であれば、相続の開始は被相続人が亡くなったその日、ということになります。しかし海外勤務中の人や、普段から疎遠にしておりなかなか連絡がつかない人など、被相続人の死亡を知るまで時間がかかるケースもあります。もしそれが3ヶ月以上にわたった場合はどうなるでしょうか。被相続人の死亡時点で相続が開始してしまうと、こういった人たちは熟慮期間のないまま相続放棄ができない事態になってしまいます。

こうしたことを避けるために、相続の開始があったことを「知った時」から3ヶ月、という規定があるのです。

生前にできる相続放棄の代替案

生前に相続放棄をすることはできませんが、その代わりとしてできることがいくつかあります。ここでは、その代替案についてご紹介します。