相続税・贈与税
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相続税・贈与税
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相続税・贈与税はとても似ているので、その違いがよく分からないこともあります。
財産を譲るという点では同じなのですが、その発生原因が異なります。相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産がその遺族ら(相続人)に引き継がれることにより発生するのに対し、贈与税は、生存するある人(贈与者)が別の人(受贈者)に無償で財産を与えることにより発生します。相続は直系の尊属(父母、祖父母など)から直系の卑属(子、孫など)に対して行われるのが基本となりますが、贈与では血縁関係の有無は問いません。
相続は被相続人の死亡に起因して自然発生するものであるため、税率は低く抑えられています。一方で、贈与は積極的な働きかけによって行われる性格のものであるため、税率は比較的高く設定されています。
相続では、亡くなった人の「遺言」がある場合には遺言で指定された人が財産を受け取ることが原則です。遺言は被相続人の意思を最大限尊重するための制度で、この遺言によって被相続人が自己の財産を他人に与える行為を「遺贈」、受け取る人のことを「受遺者」といいます。
しかし、実際には遺言がない場合も多く、そうしたときには遺産分割協議(話し合い)によって相続人間で財産の取り分を決めることになります。
民法のルールでは、誰にどのくらいの割合で財産を配分するかが決められています。これを「法定相続分」といい、法定相続分に基づいて財産を相続する人のことを「法定相続人」といいます。協議がまとまらないときや、全相続人の合意があったときには法定相続分に基づいて遺産を配分します。
また、遺言や協議により財産の配分が決まったときにおいても、配偶者や子供など、亡くなった人と関係の近い相続人には、法定相続分の50%までを受け取る権利(遺留分)が認められています。
ところで、相続においては、「相続放棄」といって被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄することも認められています。相続で引き継がれる財産には、プラスの財産(資産)だけでなくマイナスの財産(負債)もあるため、被相続人に借金などの負債が多い場合には相続放棄するほうがメリットになることもあります。また、家業の経営安定のために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するといったケースもあります。
生前贈与とは、被相続人が生前に自己の財産を相続人に無償で与えることをいい、被相続人の生存中は一般的な贈与として取り扱われます。生前贈与という言葉は、死亡後に行われる相続に相対する言葉としてよく用いられます。
生前贈与は主に相続税の節税対策を目的として行われ、住宅取得資金や教育費資金、また結婚・子育て資金といった使用目的に限定することで、一定額の範囲で非課税を可能にする制度もあります。また、内縁関係のように実質的には夫婦同然であっても相続が発生したときに相手が財産を受け取れるか定かとは言えない場合、生前贈与は確実に特定の相手に財産を渡すことができるというメリットがあります。
相続税と贈与税は、一見似たもののようですがその性質はまったく異なります。使用する目的や血縁関係の有無などによって使い分けたいものです。
例えば、孫の教育費を祖父母が上限1500万円まで非課税で贈与できる制度(教育資金の一括贈与の特例)は、贈与税の非課税自体も勿論大きなメリットですが、孫がお金がないことを理由に進学を諦めることなく、安心して勉強ができる環境を整えてあげることができるという本来の趣旨にとっても有効な使い方です。これが相続による資金頼りの場合には、必要な時に利用することが出来ないというケースも出てくるはずです。
税率面での差異を充分理解して、相続と贈与を上手に利用した対策を検討するようにしましょう。
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