相続税・贈与税

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相続税をできるだけ非課税にするには?賢く制度を利用して節税しよう!

相続税は、被相続人の財産の額によって決まる仕組みになっています。財産が多い場合は税金の金額も高額になるため、多くの資産をもつ人にとって相続税は大きな問題になりかねません。ただ、相続税には非課税制度があります。この制度が利用できる人は、一部の財産については税金がかかりません。今回は、非課税の部分を大きくし、支払う相続税を少なくしたいときに役立つ制度を紹介します。

相続税をできるだけ非課税にするには?賢く制度を利用して節税しよう!

税を抑えるには「非課税」部分をしっかり利用!

相続税を減らすコツは、課税対象となる遺産の総額をできるだけ少なく抑えることです。税金がかからない非課税の部分が多くなれば、課税対象の遺産総額はグッと減る可能性があります。日本の相続の場合、相続税が発生するケースは年間で10%未満にとどまっています。割合が少ない理由として考えられるのが、非課税枠を上手に利用している人が多いことです。相続に際して、多くの人は税理士などに相談をしながら税金の非課税制度を賢く活用している可能性があります。

制度を利用して非課税枠を広げ、発生する税金をゼロにしている人もいるでしょう。相続税を少なくしたいときは、このようなアプローチを参考にして非課税の部分を大きくし、課税される遺産をゼロに近づけていくことが大切です。

誰でも使える!「基礎控除」

「基礎控除」は、誰でも使える基本的な控除制度です。名前の通り、この制度は遺産から基礎となる金額を控除できるのが特徴になっています。控除される金額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出します。法定相続人が1人の場合は、3,000万円に1人分の控除額である600万円を足した3,600万円が基礎控除の金額です。法定相続人が2人の場合は、3,000万円に2人分の控除額である1,200万円を足した4,200万円を基礎控除として遺産総額から引くことができます。計算した基礎控除の合計額よりも遺産総額が多いときは、基礎控除の金額を引いた残額が課税対象となります。

基礎控除の合計額よりも遺産総額が少ないときは、相続税は発生しません。たとえば、総額3,100万円の遺産を1人の相続人が相続する場合、基礎控除の3,600万円を引くと500万円のマイナスがでてしまいます。このような場合の相続税は、ゼロです。基礎控除によって課税される遺産総額がゼロ以下になるときは、申告の必要もありません。ちなみに、法定相続人は配偶者や子どもなどの被相続人の血縁関係にある人です。後述するように、民法で相続権があると定められている人が法定相続人に該当するため、間違えないようにしましょう。

「法定相続人」とは

ここでは、遺産の法定受取人である法定相続人について詳しく説明します。相続税の金額は、法定相続人が何人いるかで大きく変わる可能性が高いです。どのような立場の人が法定相続人に該当するかを知っておくことは、相続税を正しく計算するうえでも重要です。

法定相続人は誰?優先順位は?

法定相続人には、2つの種類があります。1つは被相続人の配偶者、もう1つは血縁相続人です。配偶者は被相続人と血がつながっていませんが、民法上は常に相続人となります。被相続人と血がつながっている血縁相続人には、子どもや父母、兄弟姉妹などのいろいろな続柄の人がいます。血縁相続人の優先順位は、このような続柄で決まる仕組みです。優先順位の1位は、被相続人の子どもです。被相続人の父母や祖父母などの直系尊属は2位、兄弟姉妹は3位の法定相続人として扱われます。

実際に遺産を相続する権利があるのは、上位の血縁相続人です。下位の相続人は、自分より上位の相続人がいない場合に初めて相続権が発生します。たとえば、1位の相続人である子どもがいるときは、2位の父母や祖父母、3位の兄弟姉妹は相続人になれません。被相続人に1位の法定相続人である子どもがいないときは、2位の父母や祖父母が相続権を得ます。被相続人に子どもがなく、2位の父母や祖父母もすでに亡くなっている場合は、3位の兄弟姉妹に相続権が発生するのが相続の仕組みです。

血縁相続人の優先順位で少し注意をしたいのが、代襲相続が発生するケースです。1位の相続人である子どもが亡くなっていても、その子がいるときは、被相続人の孫にあたる残された子どもが法定相続人となります。

養子などのケースはどうなる?お得になるって本当?

法定相続人になれる被相続人の子どもは、実子に限りません。養子も法定相続人となり、優先順位も実子の場合と同じく1位です。養子が実子と異なる点は、法定相続人になれる人数に制限があることです。被相続人に実子がいない場合、養子は2人まで法定相続人になれます。被相続人に実子がいるときは、養子は1人まで法定相続人として認められます。このように養子の人数に制限があるのは、養子縁組で大幅な節税を狙う悪質なケースを防ぐためです。養子になれる人数が法律で決まっていれば、不必要な養子縁組を繰り返して税金を減らすことは難しくなります。

「養子をとると相続税が安くなる」などのうわさがあるように、養子縁組は相続税を減らす方法としてよく知られています。実際、1人の養子を迎えることで発生する税金の額が大幅に減るケースもあるため、うわさはあながち嘘とも言い切れません。ただ、この制度を乱用するのはリスクが高い行為です。明らかに節税目的の養子縁組は、税務署から認められないケースもあります。親族の間で大きなトラブルが発生する可能性もあるため、節税を意識した養子縁組は慎重におこなうのがベストです。

配偶者はほぼ無税!?「配偶者控除」とは

配偶者控除は、被相続人と結婚している配偶者に適用される控除制度です。この制度では、1億6,000万円と配偶者の法定相続分のいずれか高いほうを限度額にして、遺産総額から控除額を差し引くことができます。この制度によって配偶者の相続税がゼロになるケースは、実際に少なくありません。遺産の額が1億6,000万円を超えていなければ、控除額だけで遺産総額を上回る金額になってしまうでしょう。1億6,000万円以下の平均的な資産をもつ家庭の場合、配偶者控除があれば相続税を一切払わずに済む可能性が高くなります。

配偶者控除の注意点は、相続権をもつ人であっても制度が適用されないケースがあることです。被相続人とすでに離婚をしている人や内縁関係にあった人などは、少し注意をしましょう。このような立場の人も、遺言書などに記載があれば遺産を相続することができます。ただし、相続の際に配偶者控除は適用されません。そのため、遺産を受け継ぐ場合は、配偶者控除なしで遺産総額を計算する必要があります。

生命保険の非課税枠

生命保険金にも、一定額までは課税されない非課税枠が設けられています。このような非課税枠を上手に活用するのが、相続税を少なく抑えるうえでのポイントになるでしょう。ここでは、非課税枠について詳しく解説をします。

生命保険の非課税枠とは?

生命保険に加入していた人が亡くなったときは、後日に保険会社から指定の受取人に保険金が支払われます。このような保険金も相続税の課税対象となりますが、非課税枠が適用されると課税される金額が大幅に変わります。非課税枠の限度額の計算式は、「500万円×法定相続人の数」です。1人の法定相続人につき、500万円までの生命保険金には相続税は発生しません。たとえば、法定相続人が1人であり、支払われる生命保険金が450万円のときは全額が控除の対象となります。法定相続人が2人の場合は、合計で1,000万円以下の生命保険金には課税されません。

こういった生命保険の非課税枠を上手に活用すれば、残された遺族の経済的な負担はだいぶ軽くなるでしょう。ちなみに、この制度を利用するときは、生命保険金の受取人の決め方に注意をする必要があります。生命保険の非課税枠は、生命保険金の受取人を法定相続人にした場合にのみ適用されます。

誰を受取人にするのが最も得か

生命保険金の非課税枠は、受取人を誰にするかでお得になるかどうかが変わります。実際、この制度は孫などの法定相続人でない人を受取人に設定していると損をしてしまう可能性があります。法定相続人の第1位である子どもがいるにもかかわらず、孫を受取人にするケースは、「法定相続人のみ」という非課税制度のルールから外れています。子どもが生きている間は孫は代襲相続人になれないため、受取人に設定すると「法定相続人以外の人」として扱われてしまうでしょう。このようなケースでは、支払われるのが500万円以下の少額の生命保険金であっても、全額が課税対象となります。

非課税枠を利用しなくても相続税が大幅に減る配偶者を受取人にするのも、必ずしもお得とは言えないアプローチです。配偶者は配偶者控除で最低でも1億6,000万円の減額ができるため、あえて生命保険金の非課税枠を使わなければならないケースは少ないです。配偶者にこの控除を使ってしまうとほかの受取人が損をする可能性がでてくるため、「もったいない」ということになります。生命保険金の非課税枠をもっとも有効活用できるのは、子どもです。実際、配偶者と子どもを生命保険金の受取人にしている場合、配偶者控除が適用されない子どもが生命保険金の非課税枠を使ったほうが、お得になる可能性があります。

定年前に亡くなった場合の「死亡退職金」と非課税枠

企業では、死亡退職金の制度を用意していることがあります。死亡退職金は、在職中に亡くなった社員に対し、会社から遺族に一定額の退職金を支払う制度です。本来は勤務をしていた本人が退職の際に退職金を受け取りますが、在職中に死亡した場合は受け取れるはずだった退職金がもらえなくなってしまいます。このような状況をカバーするのが、死亡退職金の制度です。被相続人の遺産総額を計算するときは、この死亡退職金も課税対象の財産のひとつとして計上する必要があります。ただ、死亡退職金の場合も一定額までは控除が適用されるため、全額が課税対象となるわけではありません。

控除額を算出するときの計算式は、「500万円×法定相続人の数」です。法定相続人が1人の場合は、500万円が控除の限度額です。法定相続人が2人の場合は、1,000万円まで控除をすることができます。

未成年者・障がい者が相続する場合は優遇あり

相続税の金額は、相続する人の年齢や障がいの有無でも変わってきます。未成年者や障がいをもつ人が相続人になる場合は、優遇措置が受けられます。たとえば、未成年者が遺産を相続するときに適用されるのが未成年者控除です。この控除は、相続人本人が引き継ぐ財産はもちろんのこと、相続人を扶養する義務者が受け取る財産にも適用されます。未成年者控除の計算式は、「10万円×(20歳-未成年者の年齢)」です。相続人が18歳の場合は、20から18を引いた数である2に10万円をかけると20万円という控除額が割り出せます。

障がいをもつ人が相続人になる場合も、未成年者と同様に、被相続人、扶養義務者の双方が相続した財産に控除が適用されます。一般障がい者の控除額の計算式は、「10万円×(85歳-障がい者の年齢)」です。相続人である障がい者が60歳の場合は、85から60を引いた数である25に10万円をかけて250万円という控除額を算出します。

「非課税資産」とは?

相続税は、預貯金はもちろん、不動産や株式、骨董品などの被相続人が所有していた財産がすべて課税の対象になります。ただし、税金が課税されない非課税資産もいくつかあります。非課税資産に該当するのが、位牌などを安置している仏壇です。仏壇のように礼拝の対象になるものは、高価な素材を使った品であっても基本的に課税の対象にはなりません。また、先祖や亡くなった家族が眠る墓地も、非課税資産のひとつです。墓地の場合も、土地の地価相場や面積に関係なく相続税はかかりません。

このほか、国や地方公共団体に寄付した財産も課税の対象外です。このような財産の場合は、相続税の申告期限がくる前に寄付の事実が発生していることが非課税となる条件です。

非課税でゼロ円の場合も必要な場合あり!

試算の結果、相続税がゼロ円になったときは、税務署への申告はとくに必要ない場合が多いです。たとえば、基礎控除だけで遺産総額がゼロ円になった場合などは、申告をしなくても問題はないでしょう。気をつけたいのは、試算でゼロ円になった場合でも申告が必要なケースがあることです。いろいろな控除制度を利用してゼロ円になることがわかっても、必ずしも申告不要とは限りません。実際、配偶者控除を利用した場合などは申告が必要です。

また、不動産の試算の際に「小規模宅地等の特例」を利用したときも申告をしなければなりません。「小規模宅地等の特例」は、相続した宅地の評価額を減らせる制度です。こういった特例を活用する場合は、申告の準備も忘れずに進めておきましょう。本来、申告が必要であるにもかかわらず無申告でいると、万が一税金が発生したときに延滞税が加算されます。延滞税は相続税の申告期限から日割り計算で算出されるため、期間が長くなるほど金額が大きくなります。

国税庁のホームページで紹介されている相続税の申告期限は、「相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)」から10カ月以内です。相続人は、この期間内に被相続人の住所地を管轄する税務署に申告、納税をする必要があります。

利用できる制度を全て利用して相続税をゼロに近づけよう

ここで紹介したように、相続税には課税金額を減らせるさまざまな制度が用意されています。このような制度を利用した場合、まったく相続税が発生しないケースも珍しくありません。相続税の手続きで手こずることが多いのが、課税対象となる遺産額の計算です。計算のプロセスや申告に不安を感じる人は、相続問題に強い税理士に相談して手続きを進めるのがよい方法です。

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